チューニングの理論/上級編
チューニング(調律)には「平均律」と「純正律」があります。
平均律は周波数を12回、同じ倍率で大きくすると2倍になるような各1回を半音としています。
具体的な倍率は2の12乗根で、1.059463倍です。(計算機でこの数字を12回掛けてみてください)
つまり、各半音の幅がきっちり同じなわけです。
純正律は、ある調専用(例えばハ長調限定)の調律法で、長3度和音(ドミソド)の周波数が
完全に整数倍になるように合わせます。平均律で合わせた場合はこの周波数が合いません。
ギターで弾くとそれほどの違いは感じられませんし、単音で聞いてこの違いがわかる人も
ほとんどいないと思われますが、正弦波を発振する装置で両方の和音を聞き比べると
はっきり違いがわかります。チューニングの項で書いた「うなり」が、純正律だと全く発生
しないわけです。ただし、ハ長調の純正律に合わせた楽器で別の調の曲を弾くと、平均律以上に
狂いが目立ってきますので、いろいろな曲をひとつの楽器で弾く場合は平均律に合わせるのが
常識となっています。
平均律の各音の周波数をあげておきます。
| 低い | | | 高い |
A | 55.0000 | 110.0000 | 220.0000 | 440.0000 |
A# | 58.2705 | 116.5409 | 233.0819 | 466.1638 |
B | 61.7354 | 123.4708 | 246.9417 | 493.8833 |
C | 65.4064 | 130.8128 | 261.6256 | 523.2511 |
C# | 69.2957 | 138.5913 | 277.1826 | 554.3653 |
D | 73.4162 | 146.8324 | 293.6648 | 587.3295 |
D# | 77.7817 | 155.5635 | 311.1270 | 622.2540 |
E | 82.4069 | 164.8138 | 329.6276 | 659.2551 |
F | 87.3071 | 174.6141 | 349.2282 | 698.4565 |
F# | 92.4986 | 184.9972 | 369.9944 | 739.9888 |
G | 97.9989 | 195.9977 | 391.9954 | 783.9909 |
G# | 103.8262 | 207.6523 | 415.3047 | 830.6094 |
例えば左から2列目Aの110.0000Hzと3列目Eの329.6276Hzを見ると関連性が無さそうですが、
チューニングの項で書いた通り、これは5弦解放と5弦7フレットハーモニックスの関係です。
なので周波数はきっちり3倍の330.0000Hzになるはずですが、平均律だとわずかにずれています。
0.3Hz足らずのずれはギターでは気になりませんが、発振器で出した正弦波の音(ポーという音)
だとうなりが気になるレベルとなります。
なおギターのチューニングは、各フレットが平均律で作られていて、ハーモニックスチューニングを
すると弦間が純正律という中途半端な形になります。
※ピッチの変更について
PCで、WAVファイルで録音したものをWAVエディタでピッチ変更する場合、1.059463倍で半音上げ、
0.943874倍で半音下げになります。